必威体育_手机足球投注-官网app下载

图片

活動レポート
活動レポート

TEIKYO SDGs report最新技術が作る”モチベーション”

- デジタル技術が拓く作業療法の可能性-

1 貧困をなくそう3 すべての人に健康と福祉を4 質の高い教育をみんなに9 産業と技術革新の基盤をつくろう10 人や国の不平等をなくそう

1 貧困をなくそう3 すべての人に健康と福祉を4 質の高い教育をみんなに9 産業と技術革新の基盤をつくろう10 人や国の不平等をなくそう

沖雄二?先生の写真 

帝京大学福岡医療技術学部作業療法学科?教授 沖雄二

1991年国立療養所福岡東病院附属リハビリテーション学院作業療法学科卒業。作業療法士として病院に勤務。2003年より福岡リハビリテーション専門学校作業療法学科において学科長を務める。2008年には福岡大学大学院人文科学研究科教育?臨床心理専攻。2010年九州大学大学院歯学府にて骨の研究に取り組む。2016年帝京大学福岡医療技術学部作業療法学科の教授に就任。

このレポートを要約すると...

  • SDGs達成には、先進的な技術の活用と発展が欠かせないと記されており、あらゆる分野で多様な取り組みが行われている。人の健康に関する分野も同様である。
  • 作業療法士は人間の身体と心の専門家としてさまざまなリハビリテーションを行うプロフェッショナル。
  • けがや障がい、四肢の欠損のある方にとって体を動かすことは重要だが困難である。
  • 四肢の欠損がある場合は義手義足が有効だが、特に筋電義手は高価なため普及が遅れている。
  • そこで、3Dプリンターと市販されている基盤を用い、安価で使いやすい義手の開発に成功した。これによって、SDGsにおける健康や福祉の項目に大きく貢献できる。
  • さらにVRなどのデジタル技術を使い、「体を動かす」モチベーションを作り出す研究をしている。
  • VRを使うと無理なく無意識に体を動かせるだけでなく、ストレスも大幅に軽減できる。
  • これなら、多くの人びとに無理なく楽しいリハビリテーションを提供できる。
  • SDGsにおける、”新しい技術の発展で未来の可能性を作り出す”というテーマを見事に体現している。

作業療法の価値

イメージ写真

作業療法とは、日常生活や仕事、スポーツなどに必要な基本動作=作業における筋肉や骨の動きの専門家です。病院やクリニックでの仕事が多く、患者さんの身体的状態に応じた作業療法を実施するためのプログラムを考案しています。私が作業療法士としてのキャリアをスタートしたのは1990年代初めですが、そのころはどんな仕事かほとんど知られていませんでした。私は作業療法士として勤務する傍ら、足りない知識や技術を都度、勉強しました。2010年から4年間は九州大学大学院に通い、骨について研究した経験もあるため、現在も手足の骨折や四肢を切断してしまった患者さんと接する機会が多くあります。ここで大きな課題とされているのが義手の普及率です。義足に比べて利用者が極端に少ないのです。

主な理由は価格と重さです。手の動きは複雑なため、筋電義手という筋肉への電気信号を生かし自分の意志で動かす義手を用います。ドイツ製が優れており機能は申し分ないのですが、120?280万円と高価です。見た目も重々しく、患者さんが敬遠することが多く見られます。そこで我々は、3Dプリンターを使い、コストも重量も大幅に下げた筋電義手を開発できるのではないかと考えました。まず、CPUなどの基盤を開発しており、かつ、同じような志を持つ方を調べ、義手開発に有用な基盤を購入しました。次に、学生たちと一緒に、一つひとつのパーツをCADを使って設計し3Dプリンターで印刷して組み上げたのです。その結果、6万円で筋電義手を作ることができました。これを必要な方につけてもらいテストしたところ、十分に機能することがわかり、現在希望する人びとに向けて制作しています。作業療法の分野においては、人体の研究、患者さんからのニーズ、そして社会の先端技術を集約しソリューションを開発する、という三身一体での取り組みが、より重要になっていると感じています。

デジタル技術の可能性

2020年大きなできごとがありました。新型コロナウイルスにより、患者さんたちの状況が大きく変わりました。外に行けませんし、外から来ることもできません。私は週1回、現場で患者さんたちと接する機会がありますが、高齢の患者さんから「障がいがあり施設に入っている息子に会いたいが訪問できなく心配」だという話がありました。患者さんの心理的な状態は、治療や回復にも大きな影響をおよぼします。ほかにも複数の患者さんに似た事例が発生したため、我々はなんとかその状態を改善しようと考えました。

そこでたどり着いたのがVRの活用です。360度カメラを購入し、施設の方にも協力してもらいオンラインで繋いだところ、患者さんたちから大反響があったのです。電話だけでは体験し得ない価値を提供でき、デジタル活用に大きな可能性を感じました。そこから患者さん一人ひとりに、生まれ育った場所や訪問したい福岡近郊の観光地などをリクエストしてもらい、それを学生にも撮影してもらってコンテンツを作成しました。患者さんたちは本当に大喜びで、すばらしい体験価値を届けることができたと感じています。現在では、こうした活動を耳にした地元企業からの声をかけてもらい、ネット環境やIT環境面における支援や協働もスタートしています。Wi-Fiの利用が難しい病院でも有線環境を構築しVRの配信環境を整備も進めるなどして、インフラ整備の質が格段に向上しています。

イメージ写真

生まれたモチベーション

イメージ写真

現在では活動をさらに進めて、メタバースや3Dスキャンの活用にも取り組んでいます。たとえば、メタバース内でアバターを作り出し、実際に患者さんの姿を投影します。右手が欠損している患者さんでもアバターには右手があるようにしておきます。使い出すと夢中になってアバターを動かそうとするのですが、同時に欠損している右手の筋肉も無意識、かつ自然に動かそうとするのです。慢性疼痛で痛みを感じる高齢者は痛みのある部位を動かすことに強い抵抗を感じがちですが、この方法だと自然に動かしてくれます。麻痺のある方でも同様の効果が考えられます。これなら神経回路を無理なく動かせるのではないかと考え、今は病院と一緒に患者さんのメニューに取り入れることができないか検討しているところです。”動かすモチベーション”をしっかり作り出せれば、筋電義手や義足を身につけることへのハードルを大幅に下げることができると期待しています。3Dスキャナーの応用も、アプローチは違いますが目的は同じです。何十年も前に使っていた古いアイロンをスキャンしVRを使って高齢者の方に見せると「懐かしい!」と言いながら触ろうとします。つまり、自然なモチベーションが働くのです。これらは作業療法としてももちろん、認知機能のトレーニングにも効果的だと考えています。

驚いたことがあります。VRでのさまざまな疑似体験をした患者さんに、ストレス検査として知られるアミラーゼ検査をしたところ、数値が劇的に下がることが判明したのです。これは、VRを体験した患者さんから患部の痛みが取れたという報告があったため調査を行った結果わかりました。正直私は、結果自体を疑っていました。しかし実際に数値が大きく下がっている。そこで、25人程の患者さんに同様の検査を行い心理検査もやってみたところ、すべてに有意な結果が出たのです。驚きました。論文を調べてみると、アメリカではすでに当たり前の認識になりつつあることもわかりました。体が傷ついたり痛みが出たりすると、患部をさすりますよね。痛みの感覚は神経伝達が少し遅く、さするという行為の神経伝達の方が早いのです。したがって、さすった感覚が先に脳にいくので、遅れてやってくる痛みの感覚を紛らわせることができます。VRもよく似たような原理なのかもしれません。現在も研究を継続しているところです。

作業療法とSDGsの類似

イメージ写真

「最新の技術を使い、体を動かすモチベーションを作る」。これは、社会を発展させながら技術を進化させ、持続可能性を高めていくというSDGsの全体テーマに合致しうると考えています。私たちの方法は、デジタル化が進む世界のどこにいても応用できます。安価な筋電義手とVRの活用で、新しい仕事のスタイルが生まれるかもしれません。障がいのある子どもたちは、なかなか外に出ることができず、体を使う意識の育成が難しいのですが、eスポーツを応用することで新しいモチベーションを作り出せるかもしれません。すべての人びとの可能性を最大化することができれば、SDGsの複数のテーマに貢献できます。コストダウンした筋電義手、VRといった要素によって、体を動かすモチベーションを作り出し、そこにリハビリプログラムを提供することは、これまでにない作業療法の価値を生む可能性があります。本当に面白い時代です。とにかく患者さんのために役立つことはなんでもしたい。小さなことでも何か一つ解決できれば、患者さんたちに喜んでもらえる。これが活動のエネルギーになります。

一方、私たちは骨や筋肉、そして作業に関する専門家でもあります。デジタル化された世界だけで考えれば肉体的な動きと乖離してしまうかもしれませんが、私たちの発想はすべて人体が基礎となっています。だからこそ、作業療法として患者さんへのプログラムへと落とし込めるのです。こうした知見を育み、作業療法とデジタルの融合を実現するための教育方法も模索しています。たとえば、作業療法士もCADで設計できる知識と経験を持てば義手義足の質が変わるでしょう。そこで、私の研究室の学生たちには、設計技術を身につけてもらえるように取り組んでいます。学習に使う人体模型もデジタルを使えば一人ひとりに精密な資料として提示できます。こうして学ぶ学生たちが、次の未来を切り拓いていく姿も、SDGsが掲げる持続可能な社会の姿そのものだと考えています。作業療法の革新がSDGs実現に貢献しうることを確信しながら、今日も「患者さんたちの困った」の解決に注力しています。