救急救命士をめざすようになったのは母の病気がきっかけでした。私が高校生のときに母の病気が悪化してしまい在宅介護を経験したのですが、病から生じる身体的な痛みや心の痛みに寄り添うことの難しさを実感しました。そのときに感じた気持ちがきっかけになって傷病者の心に寄り添える医療従事者になりたいと思うようになりました。
医療系の職種はたくさんありますが、救急現場で傷病者の痛みや不安を和らげることができる救急救命士の仕事に魅力を感じ、救急救命士の国家資格を取得できる帝京大学に入学しました。
帝京大学にはスポーツ医療学科救急救命士コースがあるので、同じコースに所属する仲間が「救急救命士として活躍する」という共通の目標に向かって公務員試験や国家試験の対策に臨んでいました。また、勉強だけではなく一緒に遊びに行ったことや食事をしたことも良い思い出になっています。卒業後の道は違っても根底に持つ志は変わらない、一生付き合える仲間たちと出会えたことは私の人生にとって大きな財産です。
大学卒業後、第一希望だった東京消防庁に入庁してからは、消防学校で半年間の訓練を経て調布消防署に配属となりました。現在はポンプ隊に所属しており、火災現場に出場して消火活動に従事しています。また、予備救急隊員として救急車にも乗務しています。今後は、現場での経験を積み重ねて自分が思い描く救急救命士として活躍できるように努力を続けたいと思います。
緊急の現場へ最初に駆けつけるのが我々の役目なので、「来てくれてありがとうございます」「本当に助かりました」と感謝の言葉をいただけることが多くありますが、これは消防の仕事ならではのことだと思います。我々にとっては当然の職務を果たしているのですが、必要とされていることが非常に嬉しく、仕事のやりがいにつながっています。
職務を通して地域住民の生命や財産を守ることができるのは、消防の仕事ならではのやりがいだと思います。入庁してくる職員も「人の役に立ちたい」という志を持っている人が多いのが特徴です。また、公務員なので勤務時間の管理や休暇の取得体制が整っていることも魅力だと思います。育児休業中や職場復帰後のサポートも手厚いので、女性にも働きやすい環境です。
消防署に並ぶピカピカのポンプ車。ポンプ車の整備?
点検も、川名さんら職員の大事な勤めのひとつ。
消防官になるためには公務員試験に合格しなければならないので、試験対策が重要になります。帝京大学では学内で公務員試験対策の課外講座を受講することができたので、予備校に通う必要もなく本当に恵まれた学習環境だったと思います。また、論文試験と面接試験については救急救命士コースの教員に指導していただきました。
思いやりの心と相手の言いたいことを理解した上で自分の考えを正確に伝達できるコミュニケーション能力が大切です。例えば、子供の体調が悪くなって救急車を呼んだ保護者であれば不安な気持ちでいっぱいだと思います。そんな不安を取り除けるような説明や気遣いができるかどうかが救急の技術と同じくらい重要です。
私は勉強の息抜きが下手で根を詰め過ぎてしまうタイプだったのですが、それを見た友人が「たまには休まないと駄目だよ」と遊びや食事に誘ってくれました。同じ目標を持つ仲間たちがいたことで気持ちの切り替えもできましたし、お互いに教え合いながら勉強したことで実力が付き、模擬試験の点数も上がっていきました。
消防官になるためには公務員試験を突破しなければなりませんので、楽しみを見出すのはなかなか難しいかもしれません。しかし、消防官になって活動する姿を思い描きながら勉強することで、自分の目標を再認識してモチベーションを保てるのではないでしょうか。不安になったときは運動をして気分転換するのも良いと思います。